2026年02月24日
歯車は減速比を上げるとトルクが増えるのですが、その原理にはギヤ比や減速比、回転速度(rpm)が密接に絡んでいます。これらを理解することで、モーターの選定やギヤ設計もしやすくなるのです。
この記事では、トルクの基礎知識、減速機におけるトルクの考え方、回転速度・減速比とトルクの関係について解説します。最後までお読みいただければ、「減速比アップ=トルクアップ」の理屈がご理解いただけるはずです。
このコラムの要点
- 「回転速度」と「回す力(トルク)」は反比例の関係にあります。
- 減速機は、反比例の力を活用して、装置をコンパクトかつ高出力にするための必須アイテムです。
目次
トルクとは
トルクは、ざっくり言えば「回す力(ねじる力)」であり、以下の式で表されます。
トルク(T)=力(F)×回転軸からの距離(r)
この値が大きいほど、重いものを動かしたり、強い荷重に逆らって回転させたりする能力が高いということになります。
減速機におけるトルクとは
減速機では、ギヤ(歯車)の回転を利用してモーターなど動力源の回転数を下げる(減速する)ことで、より大きなトルクを得ることができます。高回転・低トルクなモーター出力を、「低回転・高トルク」に制御するのです。減速機の基礎や選定に役立つ考え方は、以下の記事で詳しくご紹介しています。
歯車比(ギヤ比)とは?
減速機とトルクの関係をスムーズに理解するためには、まずギヤ比(歯車比)について押さえておきましょう。ギヤ比は噛み合う2つの歯車の歯数の比率であり、以下の式で求めることができます。
ギヤ比(歯車比・i)=従動側の歯数(Z₂)÷駆動側の歯数(Z₁)
ここでいう「駆動側」とはモーター側など回す側、「従動側」は回される側を指します。たとえば、駆動側10歯・従動側50歯なら、ギヤ比は 50/10=5。このとき従動側は、駆動側より回転が遅くなり(回転数は約1/5)、その分だけトルクは増える方向に働きます。
ただし、実際の装置には摩擦や噛み合い損失があり、トルクの増え方は「理想値より少し小さくなる」ことが多いです。とはいえ、基本的にはギヤ比=回転数を落とす倍率の目安として捉えておきましょう。
回転速度とトルクの関係
回転速度(rpm)とトルクはセットで考える必要があります。ポイントは、トルク(損失は無視する)× 回転速度は一定の値に近いという考え方です。速く回せばトルクは小さく、ゆっくり回せばトルクは大きくなりやすいというトレードオフの関係になります。
自転車の変速ギヤを思い浮かべると分かりやすいです。軽いギヤはペダル(回転)が速く回る代わりに踏み込みの力は小さく、重いギヤは回転が遅くなる代わりに踏み込みの力が必要になります。減速機も同様に、回転数を下げることで「回す力」を稼ぎ、重い負荷に負けない回転を作りやすくします。
減速比とは
減速比とは、入力(モーター側)の回転数に対して、出力(減速機の出力軸)の回転数がどれだけ遅くなるかを示す比率です。以下の式で求められます。
減速比(i)=入力回転数÷出力回転数
たとえば、入力が1500 rpmで出力が300 rpmなら、1500/300=5で減速比は5。つまり、出力は入力の1/5の回転数になります。
減速比は「回転数を落とす倍率」だけでなく、トルクを増やす倍率の目安としても扱われます。もちろん損失があるので理想どおりに増えるとは限りませんが、考え方としては非常に重要です。
減速比とトルクの関係
では「減速比とトルクはなぜ関係するのか」というテーマについて考えていきましょう。入力側と出力側で仕事量(パワー)が等しいところからスタートします。ここから、回転数を下げた分だけトルクが増える関係が見えてきます。
一般に、回転系の出力(パワー)Pは、以下の式で表されます。
パワー(P)=トルク(T)×角速度(ω)
回転数 n(rpm)を使う形に直すと、関係としては「PはT×nに比例している」と捉えられます。つまり、同じパワーのまま回転数が下がるなら、その分トルクが上がる方向に働くのです。
実務では以下のような式で出力トルクを求めることができます。
出力トルク(T₂)=入力トルク(T₁)×減速比(i)×効率(η)
※減速比:大きいほど回転数が下がる
※効率η:損失分を差し引く係数(1より小さい)
たとえば、入力トルクが2 N·m、減速比が5、効率が0.9なら、出力トルク ≒ 2 × 5 × 0.9 = 9 N·mです。減速比を大きくするほど、(効率の範囲内で)トルクが大きくなります。
歯車は歯が噛み合って回るため、歯数が多い側は同じ歯の移動量でも一周するのに時間がかかって回転が遅くなります。歯車比が大きいほど、従動側の回転数は小さくなり、代わりに回す力(トルク)は増えやすくなります。
減速機が必要な理由
「大きなトルクが必要なら、最初から強いモーターを選べばいいのでは?」と思われがちです。しかし、減速機がないと必要トルクを満たすために大きなモーターを採用する必要があり、場合によっては大量のモーターを並べるような非現実的な設計になりやすいです。その結果、装置全体が重くなる、設置スペースが増える、消費電力やコストが跳ね上がるといった問題が発生します。
減速機を使えば、コンパクトなモーターでも回転数を落とすことで十分なトルクを作り出せるため、装置全体の設計がまとまりやすくなります。特に、搬送・攪拌・昇降のように「速さよりも押し切る力」が重要な用途では、減速機の有無が構造そのものを左右することも珍しくありません。
減速機の基本や導入のポイントは、以下の記事で詳しく解説しています。
この記事のまとめ
トルクとは「回す力」で、これが大きいほど重い負荷に強くなります。減速機ではギヤ(歯車)を使って回転数を下げることで、大きなトルクを得やすくなります。
ギヤ比が大きいほど従動側はゆっくり回り、トルクは増える方向に働きます。さらに、回転速度とトルクはトレードオフになりやすく、回転数を落とせばトルクを稼ぎやすくなります。
コンパクトなモーターでも強い力を出すために、減速機は非常に重要な役割を担っているのです。
よくある質問
Q
減速比を大きくし続ければ、トルクはどこまでも強くなりますか?
A
計算上は増えますが、現実には「物理的な限界」があります。
強度の限界:トルクが大きくなりすぎると、歯車自体が耐えきれず破損します。
効率の限界:歯車を増やすほど摩擦ロスが大きくなり、ある一点からトルクが増えにくくなります。
速度の限界:力を優先しすぎると、実用的な動作ができないほど回転が遅くなります。
Q
ギヤ比と減速比の違いは何ですか?
A
どちらも「回転の比率」を指しますが、着眼点が異なります。
ギヤ比(歯車比): 噛み合っている歯車の「歯数の比」に注目した言葉です。
減速比: 入力回転数に対して出力が「どれだけ遅くなったか」という結果の比率を指します。
実務ではほぼ同じ意味で使われますが、設計段階では「ギヤ比」、性能確認では「減速比」と呼ぶのが一般的です。
Q
なぜ「大きなモーター」ではなく「減速機」を使うのですか?
A
「小型・軽量化」と「コストダウン」のためです。
低回転で高トルクな大型モーターは、本体が非常に重く、価格も高価になります。小型で高回転なモーターに減速機を組み合わせる方が、装置全体をコンパクトに設計でき、安価に大きな力を得られるため効率的です。。
