減速機の仕組みとは?必要性やメリットについて解説

2025年05月22日

減速機は産業機械やロボット、自動車など、私たちの身のまわりにある多くの製品に使われています。しかし、その仕組みや種類については、意外と知られていないのではないでしょうか。

この記事では、減速機とは何か?その仕組みや導入することで得られるメリット、代表的な種類について、わかりやすく解説します。ぜひ減速機についての理解を深めるきっかけになれば幸いです。

目次

減速機の仕組みとは?

減速機は、モーターの回転数(速度)を落とし、トルク(回転力)を高めるための装置です。モーターは高速で回転させることができますが、高速になればなるほど繊細な動作や重い物体の駆動が難しくなります。ここで登場するのが減速機です。

たとえば、ギヤ(歯車)を複数組み合わせることで、出力側の回転速度を制御しながら、大きな力(トルク)を得ることができます。トルクとは「回転力」のことで、車の加速力やロボットの持ち上げ能力などに関係します。

減速機とはモーターの速さと力のバランスを最適化するための、非常に重要な中間機構なのです

減速機はなぜ必要?使用するメリットとは

減速機を使わずに大きなトルクを得ようとすると、それに見合った大型モーターを使う必要があり、装置全体が重く・大きく・高価になってしまいます。しかし、減速機を活用すれば、比較的小型なモーターでも高いトルクが得られ、省スペースで効率的な設計が可能です。これは、機械設計やコストパフォーマンスを考える上で非常に大きなメリットになります。

また、減速比を調整することで、製品ごとに最適な出力回転数を得ることができ、用途に合わせて柔軟に対応できます

減速機の種類

減速機にはさまざまなタイプがあります。ここでは、よく導入されている「平行軸歯車減速機」と「遊星歯車減速機」をはじめとした代表的な減速機の種類やそれぞれの利点・弱点、使用されている製品などについて解説します。

平行軸歯車減速機

平行軸減速機は、最も基本的な構造の減速機で、産業用装置などで広く利用されています。入力軸と出力軸が平行に配置され、歯車の組み合わせによって回転速度とトルクを調整します。主に「平歯車減速機」と「ヘリカル減速機」の2種類があります。

平歯車減速機

平歯車減速機は、平行軸減速機の一種で、平歯車(スパーギヤ)を組み合わせたシンプルな構造の減速機です。歯車同士が直線的に噛み合うため、動力伝達効率が非常に高く、設計やメンテナンスも比較的容易であるというメリットがあります。産業用機械、工場の搬送装置やポンプ、ミキサーなど、幅広く導入されています。

一方で、歯と歯が衝突するように噛み合うため、動作音が大きいという点がデメリットといえます。そのため、静粛性が求められる装置では、以下で紹介するヘリカル減速機が選ばれることもあります。

ヘリカル減速機

ヘリカル減速機は、はすば歯車(ヘリカルギヤ)を用いた平行軸減速機です。歯が斜めにカットされているため、歯と歯が徐々に噛み合う構造になっており、動作が非常に滑らかで静音性に優れているという特徴があります。

特に、高精度が求められる装置や、回転の安定性が必要な場合には、ヘリカル減速機が効果を発揮します。負荷のかかる産業用ロボットや自動化設備でも広く利用されています。

遊星歯車減速機

遊星歯車減速機は、太陽の周囲を一定の軌道で公転する惑星のように、中心の太陽歯車のまわりを複数の遊星歯車が取り囲み、それらが内歯のリングギヤと噛み合う構造の減速機です。各歯車に力が均等に分配されるため、コンパクトでありながら高トルク化が可能となります。

トルクの伝達がスムーズで、かつ入力・出力の同軸配置により省スペース化が図れるため、限られた設置スペースの中で高トルク・小型化を両立させたい場合に最適です。また、逆に増速する用途にも応用されます。産業用自動機の駆動部、建設機械や輸送機器、小型ポンプやウィンチなどに使われます。

ウォーム減速機

ウォーム減速機は、ねじ状のウォーム(ねじ歯車)と斜め歯のウォームホイールを組み合わせた減速機です。1回転で1歯しか進まない構造のため、非常に高い減速比が得ることができ、一方向からのみ力を伝える構造のため、逆転を防ぐ(セルフロック)目的でも利用されます

反面、効率がやや低く発熱しやすいという点に注意が必要です。エレベーターやリフトなどの昇降機、搬送用ターンテーブル、開閉装置や駐車場ゲートなどに使われています。

傘歯車(ベベルギヤ)減速機

傘歯車減速機(ベベルギヤ減速機)は、円錐状のギヤが使われている減速機です。伝達方向を変更できることが最大の特徴であり、軸の向きを変える必要がある機械装置でよく使われます

水平方向から垂直方向へ回転を伝えるような構造に適しており、設計の自由度を高めることが可能です。産業用減速機のコーナー部、工作機械の回転軸変更部、自動車のディファレンシャルギヤなどに使われています。

波動歯車減速機

波動歯車減速機は、楕円カム・内歯車・薄い柔軟な歯車(フレックススプライン)などから構成される減速機です。変形を利用して歯車同士を噛み合わせる構造になっており、非常に高精度・高減速比が得られます。バックラッシ(歯の遊び)が極めて小さく、ロボットや精密制御装置で活用される場面が増えています。サーボ制御装置や精密測定機器、光学機器、航空宇宙機器などに使われています。

まとめ

今回は、減速機とは何か、その仕組みや種類、使用するメリットまでをご紹介しました。装置のトルク・速度を最適化するためには、目的に応じた減速機の選定が非常に重要です

信電舎では、平行軸歯車減速機や遊星歯車減速機を中心に、お客様のニーズに合わせて減速機をご提供しております。既製品のほか、一部仕様を変更したセミカスタム、0から設計するフルカスタム減速機も製作可能です。たとえば、高トルク化や長寿命化、特殊環境対応など、用途に応じた最適なご提案もいたします。弊社の減速機の詳しい特徴や導入までの流れは製品ページでも詳しくご紹介しておりますので、ぜひご覧ください。

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