2025年08月26日
歯車(ギヤ)選定は、機械設計や部品調達の基本ともいえます。既製品からオーダーメイドまでさまざまありますが、用途や性能に合ったギヤを正しく選ぶことで、製品の耐久性・静音性・コストパフォーマンスが大きく変わります。
この記事では、歯車選定の基本と、オーダーメイドで発注する場合のチェックポイントをわかりやすく解説します。
このコラムの要点
- ギヤは動力伝達の中枢であり、選定ミスは摩耗、破損、性能低下を招いてしまいます。既製品で条件が満たせない場合は、オーダーメイドがおすすめです。
- ギヤ選定の際には、材質・仕様・特性をチェックしましょう。
- オーダーメイドのギアを検討する場合は、設計スケジュールや納期を確認しましょう。
目次
1.なぜギヤの選定が大切なのか
2.既製品とオーダーメイドの選定するポイントの違い
3.ギヤ選定でチェックするポイント
POINT1 材質をチェック
POINT2 仕様・特性をチェック
4.よくあるオーダーメイドのギヤによるお悩み解決事例
早期に摩耗・破損してしまうので長寿命化させたい
動作音を静かにしたい
5.カスタムする場合は発注・製作までの流れと納期感を把握
6.【まとめ】歯車の選定は、条件にあうものを探すことから
なぜギヤの選定が大切なのか
ギヤの選定を誤ると、想定外の摩耗や破損、製品の性能低下といった、さまざまなトラブルを招きます。歯車は動力伝達の中枢であり、材質や加工精度によって寿命や効率が大きく変わるのです。
既製品では満たせない条件や特殊仕様が必要な場合、オーダーメイド製作が有効です。適切な歯車の選定、あるいは製品に合わせた歯車を製作することで、耐久性・コスト・性能を最大化し、長期的な安定稼働に直結します。
既製品とオーダーメイドの選定するポイントの違い
既製品からギヤを選ぶ場合は、ギヤにかかる負荷トルクを算出したうえで、カタログなどで規格や許容トルク、歯数、モジュールを確認し、必要な強度や回転性能に合うものを選びます。一方、オーダーメイドの場合は、用途に合わせてギヤの材質や表面処理、歯形形状まで自由に設計可能です。
たとえば耐摩耗性が必要な場合は特殊鋼や表面硬化処理を、静音性が求められる場合はヘリカルギヤを採用するなど、目的に最適化できます。オーダーメイドは製品性能の最大化を図れる反面、仕様検討の工程が重要です。
ギヤ選定でチェックするポイント
ここからは、主にオーダーメイドのギヤを発注することを想定して、歯車の選定方法や選ぶ際に考慮すべきポイントを解説します。
POINT1 材質をチェック
強度、耐摩耗性、耐食性、熱安定性などはギヤの材質に大きく左右されます。高負荷用途なら合金鋼や焼入れ鋼、軽量化や耐食性重視ならアルミ合金や樹脂が選ばれることが多いです。
信電舎では鉄鋼材(S45CやSCMなど)、銅合金(黄銅やリン青銅など)ステンレス(SUS303、SUS416など)、アルミ合金(A2017、A7075-T6など)といった幅広い材質に対応可能です。使用環境(高温・低温・水中など)や負荷条件、精度要求を考慮して材質を決定することで、ギヤの性能を長期間維持できます。
POINT2 仕様・特性をチェック
ギヤはその使用用途や設計目的に応じて選定しましょう。たとえば静音性重視であればスパーギヤよりも噛み合いが滑らかなヘリカルギヤが適しています。回転方向の変更がある場合は90度方向に動力を伝えるベベルギヤを。高減速比が必要な場合はウォームギヤが有効です。
さらに耐久性や効率を高めるため、潤滑や表面処理の組み合わせも検討します。こうした仕様選びが、設計の成否を大きく左右します。信電舎では軟窒化処理、焼入れ・浸炭焼入れ・高周波焼き入れ、無電解ニッケルめっき・電解ニッケルめっき、アルマイトなどの幅広い表面処理が可能です。
表面処理の詳しい解説はコラム「摩耗・騒音・寿命の悩みを解決!ギヤの表面処理とは?」をご覧ください。
よくあるオーダーメイドのギヤによるお悩み解決事例
オーダーメイドの歯車であれば、既製品では解決できない問題を性能面から解消できます。ここでは代表的な改善事例を紹介します。
早期に摩耗・破損してしまうので長寿命化させたい
摩耗や破損の早期発生は、材質選定や表面処理の見直しで解決できます。耐摩耗性の高い鋼材や特殊合金などの素材を採用するか、表面硬化処理(高周波焼入れ、浸炭焼入れなど)を施すことで、摩耗を防ぎつつ衝撃にも強いギヤにできます。これによりギヤの寿命が延び、製品のメンテナンスやギヤ交換の頻度も軽減でき、長期的なコスト削減につながります。
動作音を静かにしたい
製品の動作音低減には、ヘリカルギヤや精密加工による歯面仕上げが有効です。さらに、潤滑性を高める無電解ニッケルPTFEめっきなどの表面処理を組み合わせることで、摩擦音が減少し、静粛性が大幅に向上します。特に工作機械や医療機器、車両など、静音性が重要な環境で効果を発揮します。
カスタムする場合は発注・製作までの流れと納期感を把握
オーダーメイド歯車の一般的な流れは、メーカーや商社への問い合わせ →担当者からのヒアリング・仕様すり合わせ → 見積もり → 試作品製作 → 量産→納品 です。
納期は仕様や加工内容によって異なります。使用開始時期が決まっている場合は、初期段階で納期を確認し、メーカーや商社の担当者にしっかりと伝えることと、設計スケジュールにあらかじめ組み込むことが重要です。
【まとめ】歯車の選定は、条件にあうものを探すことから
歯車の選定方法を正しく理解することは、製品のトラブルを避け、性能を最大化するための第一歩です。まずは用途・条件に合う歯車を探し、最適な材質・仕様を検討しましょう。
もし既製品で条件を満たせない場合は、プロによるオーダーメイド製作がもっとも確実です。信電舎では既製品はもちろん、オーダーメイドのギヤ製作にも対応しております。前述のとおり幅広い材質・表面処理をお選びいただけます。試作品から量産まで一気通貫で対応可能です。歯車の選定でお困りなら、ぜひお気軽にご相談ください。
