バックラッシとは?バックラッシをなくすことはできるのかを解説

2025年10月16日

バックラッシとは?バックラッシをなくすことはできるのかを解説バックラッシは、歯車設計・組立の“キモ”です。できればないほうがいいと思われがちですが、実は適切なバックラッシ設定こそ装置寿命と静粛性の鍵です。

この記事では、バックラッシとは何か?といった基礎から、必要性、測定方法と付け方、バックラッシを小さくすることができるのか、初学者にもわかりやすく解説します。

目次

バックラッシとは

バックラッシュ(法線方向)半径方向の遊びバックラッシ(「バックラッシュ」と表記されることもある)とは、歯車同士がかみ合う箇所に意図的につくられた“遊び”や隙間のことです。もしも、このバックラッシがゼロだと、歯面どうしが干渉して回転できず、わずかな熱膨張や芯ずれで急激な破損が起きます。特に逆転が伴うような機構では、遊びがないと反転時の衝撃で歯が欠けるリスクが増大します。

適切なバックラッシの目安はJIS規格などに整理されており、モジュール・精度等級・用途で推奨値が異なります。「バックラッシは歯車にとっては“必要な安全弁”」という前提を押さえましょう。

バックラッシが必要な理由

バックラッシは小さすぎても大きすぎてもNGです。小さすぎる場合は歯面間の油膜が切れやすくなり、潤滑不良によって摩耗や焼付きが進行します。温度上昇・熱膨張により装置の寿命低下を招きます

大きすぎる場合はかみ合いが不安定となりガタが拡大し、衝撃や振動が増えてギヤノイズが悪化、さらにはピッチングや歯面剥離につながりかねません。さらにポジショニング精度も落ちます。

バックラッシを“完全ゼロ”にするのは、熱・製作公差・組立誤差・弾性変形を考えると現実的ではありません。機能を保ちつつ、用途に見合う最適なバックラッシ量を与えるのが設計の要点です。

バックラッシの測定方法

バックラッシの測定では、対象歯車の大きさ(モジュール・歯数・ピッチ円直径)と、歯車の種類に応じた定義を確認します。以下で代表的な歯車ごとの考え方と要点をまとめました。なお、実務では規格票とメーカー仕様に従ってください。

スパーギヤ・ヘリカルギヤの場合

バックラッシは互いにかみ合う一対の歯車のピッチ円周上の隙間や遊びとして定義されます。
バックラッシの大きさは、歯車の精度等級に応じて計算で求めることができます。一対の歯車の正面モジュールと二つの歯車のピッチ円の直径を元に、最小バックラッシと最大バックラッシが求められます。

ベベルギヤ(かさ歯車)の場合

互いにかみ合う1対の歯車の外端ピッチ円周上の隙間や遊びとして定義されます。
一対の歯車の外端の正面モジュールと外端ピッチ円の直径を元に、最小バックラッシと最大バックラッシが求められます。

円錐歯面特有の歯当たり位置・組立誤差の影響が大きく、スパー・ヘリカル以上に調整治具と測定位置の厳密さが重要です。

バックラッシの付け方

バックラッシをつける方法は大きく2つあります。

バックラッシュの付け方(歯厚)一つ目は歯厚を小さくする(歯形側で与える)ことです。歯厚(基準歯厚)をわずかに小さく仕上げ、歯面どうしのすき間を確保します。中心距離が変動しても所定の遊びを維持しやすいというメリットがありますが、高精度な製作管理が必要になることがデメリットです

バックラッシュの付け方(中心距離)二つ目は中心距離を大きくする(組立側で与える)という方法もあります。2歯車の中心距離を規定値より微小に広げ、結果としてかみ合い側隙を作ります。メリットは調整が容易な点であり、デメリットはかみ合い率や歯当たりに影響しやすく、騒音/効率が悪化することがあるという点です

実際の現場では、歯厚微修正と中心距離微調整を併用し、歯当たり・音・トルク波形を見ながら“最適点”に合わせ込むことが多いです。

バックラッシを小さくすることはできるのか

結論からいうと、ゼロにすることは基本的に不可ですが、“最小化”は可能です。特にロボット、計測機、半導体搬送など位置決め精度が求められる分野では、バックラッシの極小化が求められるケースもあります。しかし、熱・荷重による歪みや膨張、油膜形成を考慮すると、完全ゼロは摩耗や焼付きのリスクが高く現実的ではありません

そのため、バックラッシをゼロにする点ではなく、どれだけ小さくするかという点で最適なバックラッシになるように調整します。

バックラッシを小さくするための方法はギヤの種類により異なります。その中でも、ほぼすべてのギヤに適用可能かつ、よく取られる手段として、
歯車を二つに分割し、二枚の歯車をずらして位相関係を調整する方法があります。ただし、減速機内のギヤにおいてはこの方法を取ることは困難です。

弊社でも「バックラッシを完全にゼロにする」ことはできません。しかしながら、用途・条件に応じた最適な目標値のご提案・調整で対応しますので、お気軽にご相談ください。

まとめ

バックラッシは、歯車の潤滑確保・熱・公差吸収・逆転衝撃緩和のために不可欠な遊び(隙間)です。ゼロにすることは基本的に不可能で、小さすぎると潤滑切れ摩耗・焼付が、大きすぎるとガタ・騒音・振動が発生しやすくなり、寿命低下を招きます

バックラッシは、「歯厚を小さくする」「中心距離を大きくする」の二通りの方法で調整します。また、バックラッシをゼロにすることはできませんが、最小化するための方法があります。

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